周南市鹿野上の漢陽寺は大内氏によって1374年に創建された臨済宗南禅寺派別格地の由緒ある寺院で、また日本庭園の美しいお寺でもあります。本堂や書院を中心に作庭された庭園が国の登録記念物となる見通しになりました。8年の歳月をかけ「昭和の雪舟」と呼ばれた重森三玲により完成しました
漢陽寺山門への参道の腋には桃山時代様式の 曹源一滴の庭 があります。山水画の画風を日本庭園の様式に取り組んだ庭園。このようにそれぞれ異なる時代の様式を取り入れた趣のある庭園が6つあります
建立当時は茅葺屋根であったが後瓦葺きになった山門。山門をくぐると正面に本堂があり、本堂の左側には法堂があります(四季を通じて景色の変わる庭園を観賞するのには拝観料が要ります)
法堂 僧侶が仏教を講義する建物のことで山門と同じ時期に建立されたようです。法堂近くには災いを消す石、消災石があります
樹齢2000年以上の台湾檜材の造りの 本堂 は大内公が創建した当時の様式を復元した優雅な方丈建築
本堂前には平安時代から鎌倉時代にかけて流行した優美な 曲水の庭 があります。当時の貴族が詩歌をつくり、曲水に盃を浮かべて遊んだと言われる崇高な感じがする庭園です。江戸期に完成した水路トンネル「潮音洞」の水が枯山水の庭を流れています
曲水の庭から潮音洞への間には 祖師西来の庭 があります。この庭は重森三玲氏の弟子が作庭したそうです
潮音洞 鹿野地区の 代官であった「岩崎想左衛門重友」が水利に恵まれなかった鹿野大地の水田開作と生活用水を救うために、私財をなげうって漢陽寺の裏山に造った導水路で、清らかな水が300年以上もこの地を潤しているそうです
鎌倉時代様式の 蓬莱山池庭 苔地の築山を造り潮音洞の水を分流させた流水式の庭園で石組が力強い構成になっています
地蔵遊化の庭 は平安時代様式で、地蔵菩薩が子供と遊戯する様を平安時代の石組によって表現したそうで楽しそうに舞っている姿を想像できます。四方どこからでも眺めることができる珍しい庭。後方は蓬莱山池の庭。秋には燃えるような紅葉がとても綺麗な庭です
九山八海の庭 九山八海とは、仏教における宇宙観のことで、この世の中心には宇宙空間をも超えるような孤高な山があり、これを須弥山と名付け、その山の周囲を九つの山と八つの海が囲んでいる様を表現した庭は鎌倉時代様式
新緑のもみじの木々が生い茂る庭園内にある鐘楼も重森三玲による設計だそうです
川が流れる水の音が聞こえる書院ということから大書院・聴流殿と名付けられた大書院裏にある庭園は赤い砂と白砂、サツキの刈り込みを一松模様にしたモダンなデザインで現代アートを思わせる 瀟湘(しょうしょう)八景の庭 普段は非公開の庭ですがご住職さんの許可を得て撮影させていただきました。ゆっくりと座って眺めていたくなるほど表情豊かな庭に心を癒されました (2021年7月3日)